現在、議論されている「日本語教師の資格化」についての意見公募が始まりました。
この意見公募は「パブリックコメント」と呼ばれるもので、行政手続法で義務付けられているものです。
新たに行政の命令などを定めるときには、国民に意見や改善案などを聞いてから制定するということになっています。
今回のパブリックコメントは「日本語教師の資格化」についてです。
日本語学校関係者にとっては大きな制度決定となりますので、ぜひ皆さんもパブリックコメントを出してみてください。
パブリックコメントを出すこと自体は、そんなに敷居が高いものではありません。誰でも気軽に出すことができます。
パブリックコメントの出し方については、下記のURLをご覧ください。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001078&Mode=0
【資格制度創設の概要】
1.日本語教師の資質や能力を証明する資格がないので、資格制度を整備する。
2.資格化により、日本語教師の質の担保と量の確保ができるようになることをねらいとする。
3.この資格は10年を期限とし、更新時には講習などを行う。
4.資格を得るためには、次の3つの要件を必要とする。
A.新設の試験の合格
B.教育実習の履修
C.学士
5.法務省に告示されている日本語教育機関の教員要件を満たす者には、経過措置として資格を与える。
6.日本語教育の主専攻を修めた者や、文化庁が認可している日本語教育養成講座終了者には、
試験や実習の一部免除などを検討している。
【パブリックコメントの重要性】
パブリックコメントを出したからといって、必ずしも聞き入れてもらえるというわけではありません。
過去の事例として、ほぼパブリックコメントの意味がなかったことも多いです。
しかし、パブリックコメントの意見が受け入れられて政府案が大幅に修正された例もあります。
パブリックコメントが受け入れられるかどうかの基準として、パブリックコメントの数は重要でしょう。
民主主義社会の原則は「民が主権を持っている」ということです。一人一人の民が主権を行使できる社会なので、数が集まることはものすごい力となります。
簡単に言うと、「少数派の意見は黙殺できるけど、たくさん意見が集まったら無視できない」ということになります。
今回の資格化は日本学校業界にとって大きな転換点になることでしょう。
意見がある方は、ぜひパブリックコメントを出してください。
また、周りの方にこのパブリックコメントのことを広く伝えていただければと思います。
【私の意見】
以下に、私がパブリックコメントとして送ったものを紹介しておきます。
2-(2)について
「学士以上」を要件にすることは適当ではないと考える。
学士以上の学位を持っていても「幅広い教養と問題解決能力がある」とは限らないし、反対に、学士未満であっても十分に「幅広い教養と問題解決能力」を備えている可能性がある。この能力を学位で測ることに合理的な理由はないので、新設の試験において測るべきである。また、「30代以上で日本語教師として活躍しているが学士未満である」という者への配慮も必要である。働きながら学士を取ることの社会的難度を考えると、実質的に上記の者を排除する制度になってしまう危険もある。これは今回の資格制度創設の目的とも一致しない。
8について
資格制度にする以上、この資格をもって「何ができるか」、この資格がないと「何ができないのか」を明記するべきだと考える。例として、「日本語教育機関において授業を行う者は、公認日本語教師でなければならない」とか、「公機関での指導ではなく、個人的な日本語指導の範疇においては公認日本語教師の資格を求めない」といったようなものが考えられる。このような設定がない限り、この資格制度が実行効力を持たない形骸化されたものになってしまう危険があると考える。
“【重要】公認日本語教師
資格制度新設にあたっての意見公募開始!” への4件のフィードバック
海外で日本語教師の資格を取得し海外で15年経験を積んできましたが、日本国内の学校ではないため、何ひとつ認められません。
またゼロからやれと。
「多様な背景を有する日本語教師」とは一体どんな意味なんでしょう?
えんぴつさん、コメントありがとうございます。
「海外での経験を国内では認めない」というのは以前から問題になっていますが、なかなか解決されませんね。
今回の「公認日本語教師」の資格は日本語教育機関だけではなく、プライベートレッスン、在住外国人への日本語指導、児童への日本語教育など、様々な場面での資格となるので、海外での経験というのも生かされる枠組みになるとよいですね。
公認日本語教師の資格に関しては、前提条件が学士である必要はないと考える。なぜならば、短大卒でも大学中退でも、助教諭免許の要件を考えると62単位取得していれば堂々と、学校で教えられるし、日本語教師は、教員免許とは異なるものの、前述したことを踏まえれば、教育機関の教員として成り立つはずである。専門学校卒業(専門士から大学の編入も可能である現状も考慮すると)も、その単位数を満たせていれば、成立するものであり、学士必須は、幅広い経験を持つ人材を排除するだけの規定にしかならないと考える。
10年ごとの更新制度は、いたしかたないと思うが、その更新のための機関がどこかは、あらかじめ選別した結果を提示し、広く検討する機会を設けるべきであろう。そうでなければ、更新制度の利権を持つ組織が生まれてしまう。新しい国家資格の検定試験も利権を持つ組織の誕生が発生しないように精査すべきであろう。
現在、法務省告示校で勤務している日本語教師は、告示校が追認する形で、公認資格を与えた方が、時間と労力の無駄を省けると思われる。また、告示校で勤務していなくても、告示校で勤務できる状況の方に、もれなくどうアプローチするかも課題の一つであろう。
そもそもの目的が、日本語教師の質の保持やレベルアップなのだから、現状をいったん認めて、どう研修していくか、それも、その研修が現状の勤務を過大に妨げることなく行えることを優先しなければ、ただの机上論としての後世の批判や反省材料になるだけだと思われる。
さらに、この論議に時間を費やし過ぎると、どんどん辻褄が合わなくなるので、2020年03月までには、施行する年月日はともかく、経過措置も考慮した結論を出すべきである。
結城さん、コメントありがとうございます。
勉強不足で、助教諭免許の件は初めて知りました。
このような具体的な例があると、学士にこだわる必要がないということの説得材料になると思います。
すでにパブリックコメントをお出しになっていると思いますが、まだでしたら出していただけると助かります。
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