日本語学校法令・政策

【コラム】「CEFR A2以上」を生徒に取ってもらうには(1/2)

前回の記事の続きです。
前回の記事をご覧になってない方は、まずこちらをご覧ください。
「CEFRのA2相当の基準、発表!https://teach.midream.ac.jp/2019/09/1105/

前回のポイントは、
 1.日本語学校は、生徒が卒業するまでにN4以上の試験に合格させる必要がある。
 2.日本語学校の生徒の多くはN4を受けずに、N3以上を受験する。
 3.だから、事実上、卒業までにN3に合格させなければならない。
ということでした。

 漢字圏学習者にはそんなに高いハードルではありませんが、非漢字圏学習者にはやや高いハードルとなります。非漢字圏学習者のほぼ全員がN3以上に合格して卒業している日本語学校があるとすれば、それはかなり優秀な学校だと思います。平均的な日本語学校では、非漢字圏学習者の卒業生の半分程度がN3を取得している状態でしょう。(※私個人の見立てです。そういう統計があるわけではありません。)また、前回の記事にも書いた通り、漢字圏学習でもN2やN1を受け続けて、結局どのレベルにも合格しないまま卒業してしまう学生もいます。

 色々と問題はありますが、告示基準で求められている以上、日本語学校はそれに対応していかなれければなりません。ここでは、日本語学校が取れそうな対応策をいくつか挙げていきたいと思います。

対応策1「1年目にN4を必ず受けてもらい、2年目にN3以上に挑戦してもらう。」
 この方法を取れば、多くの生徒にN4を取得してもらえるでしょう。ただし、生徒が素直にN4を受けてくれるとは限りません。大学や専門学校でN4を要求するところはまずないことを考えると、生徒にとってN4を取得するメリットはほとんどありません。そのメリットがほとんどないN4の試験を労力とお金を使って受験するでしょうか。また、労力とお金以上に大切なのが「試験を受ける機会」です。年2回しかない受験チャンスなのに、「そのうちの1回をN4に使うなんてもったいない」と考える生徒は少なくありません。今までの指導経験の中で言うと、非漢字圏学習者は「来年のN3の練習として受けようね。」というとある程度の生徒は受けてくれますが、漢字圏学習はこの手の説得は無理でしょう。N3、またはN2から受験したがります。

対応策2「JLPT以外の試験を受けさせる。」
 JLPTは各レベルの認定率が30~35%を推移しています。そもそも、JLPTは10人受けたら7人が落ちる試験なのでこれに頼るわけにはいきません。保険として他の試験も並行して受けるべきなのです。他の試験で告示基準上有効なものは、日本留学試験、実用日本語検定J.TEST、JLCT 、STBJ標準ビジネス日本語テスト、TOPJ実用日本語運用能力試験の5つです。このうち、日本留学試験以外は大学や専門学校の受験においてほとんど使われていないので、生徒は受けたがらないでしょう。どうしても受けさせたかったら、学校でお金を出して授業時間に受けさせてしまうという方法もありますが、これはコストがかなりかかります。
 また、日本留学試験を受けさせるにしても問題点が2つあります。一つは難易度です。「日本留学試験については200点以上をCEFRA2相当とする」と告示基準の解釈指針で示されています。この200点というのは、JLPTのN4よりはるかに難しいです。EJUの点数とJLPTのレベルの相関関係を示した公式資料はありませんが、多くの大学や専門学校で、受験資格を「N2、またはEJU200点」としているところからもわかるようにEJU200点というのはN2に匹敵する点数です。(私個人の意見としては、EJU200点はN3以上、N2未満程度だと評価しています)
 もう一つの問題点は、日本留学試験を受けたがらない生徒が一定数いるということです。日本語教育機関の在籍者が約10万人いる中、受験者は3万人しかいません(※参考 過去記事 https://teach.midream.ac.jp/2019/07/781/)。EJUを受けない理由としては、大学院や専門学校でEJUを要求しないところが多いということが挙げられます。そのため、受ける必要がないと思っている生徒が一定数います。

 

 このように、対応策1、2ともある程度の効果は得られると思いますが、決定的な解決策とはなりません。
複数策を並行して実施し、打率を上げていくという方法しかないのかなと思います。

 次回、続きのコラムでは「対応策3」について書きたいと思います。

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